「大変お待たせいたしました。いや、お待たせし過ぎたかもしれません」
5/10に『100%SKE48』vol.03を発売してから一段落がついたので、本橋信宏さんによる村西とおる監督伝「全裸監督」を読了したのですが、まさにそんな気持ちです。
……いや、そんなことはさておき『100%SKE48』です。なんとvol.03です。第三弾です。みなさん本当にありがとうございます。先ほども書いたとおり、もろもろ落ち着いてきたところもありますので、この本についてあらためて自分なりに考え、気持ちをあらたにするためにも何か書いてみようと思います。
ちょうど1年前に出した第一弾では、表紙には松井珠理奈さんを起用し「決起せよ。」とコピーを打ったわけですが、当時は本当に、長年紙媒体でSKE48に携わってきた一人として、「何かやらなくてはいけない」という切羽詰まった思いがありました。前年(2015年)の松井玲奈さん卒業以降、「まだまだSKE48は大丈夫」とメンバーは前向きなことを言うものの、どうにも拭えない不安だったり閉塞感のようなものを、SKE48に関わる人の多くが感じていたと思います。
メディアで取り上げられる回数も一時期より少なくなり、代わって「坂道シリーズ」が大特集される機会が増えてきました(僕もそういう雑誌に関わる人間ではありますが…笑)。だからこそ、ここで一冊SKE48だけの特集本を作って結果とインパクトを残せれば、潮目が少し変わるんじゃないかと。そんなことを考えながら制作を進めていたわけですが、同時に、これがコケたらマジでヤバいなとも思っていました。「やっぱりSKE48じゃ売れないんだね」という結果を残してしまったら、ますますメディアがSKE48と距離を置こうとしてしまうかもしれない。正直、自分でやるって決めたものの、「本当に今出すべきなんだろうか……」というのは常に頭にありました。さらに、その時期は自分とSKE48サイドとの距離感もちょっと変な感じになっていたのもあり、微妙に衝突したりもして……(もう、今では話のネタになってます笑)。まぁ、いろいろとしんどかったです。
そんな状況下でなんとか出版にこぎつけたわけですが、これが賛否両論巻き起こして想像以上に話題になりました。一番多かった反応は「『100%』って言ってるのにメンバー登場率が100%じゃない!」でしたけど(笑)。でも、それだけファンのみなさんの中に「店頭に並ぶ本にSKE48メンバーに出てもらいたい」「SKE48にはこんな子たちがいるんだ」という気持ちが溜まりに溜まっていたんだろうなと。そして、「SKE48オンリーの雑誌なんて何度も出るわけないんだから、これに出られなかったメンバーは、もうどうしたらいいんだよ!」という思いもあったんじゃないでしょうか。だから、こういう反応が出るだろうことは、第一弾の編集後記でも書きましたけど、発売前からある程度は予想していました。ただ、僕としては一発で終わらせるわけにはいかないというのが大前提で、先ほども書いたとおり「コケたら終わり」ぐらいの危機感はあったので、ある意味では手堅く作りました。登場メンバーもそうですし、これまでの「SKE48文脈」に則った構成というか。「厳しい状況でこそ栄は燃える」、というのがSKE48には昔からあるんですよね。そして、その状況を変える何か一撃があれば、それがきっかけとなり、物語が動き出す。これまでSKE48を見てきて、そういう瞬間を何度か目撃しているので、その感覚は大事にしようと。それが『100%SKE48』の第一弾でした。先につなげるためには、あえてキャスティングも厳選し、内容も「危機との対峙」というものにした方がいいんじゃないかと……それはもう、勘です!
そして、半年後の2016年11月に第二弾を出すことができました。表紙はエース候補として期待もされている北川綾巴さんで、キャッチコピーは「今、必要な勇気。」。第一弾でそれなりにインパクトを残せた感触もありつつ、この夏の美浜海遊祭ライブで斉藤真木子さんがキャプテンとして「ナゴヤドームでコンサートをしたい」と発言したことも踏まえて、SKE48にはもう一歩先に進んで欲しい(こっちの勝手な願望ですね笑)。なので必要なのはやっぱり、「勇気」かなと。それに、僕自身第二弾を作る上で必要だったのは、再びこのSKE48という険しい山を目の前にして「逃げ出してぇ……」という考えを振り払い、もう一度挑むという「勇気」でした笑。あぁ、今あらためて気づきましたが、第一弾も第二弾もテーマは自分自身に返ってきてますね……(持論として、アイドルに投げかける応援や言葉は自分自身の願望にリンクする、と思っています)。北川さんにはバンジージャンプを飛んでもらったり、初ソロ水着グラビアを髙寺沙菜さん、松本慈子さん、菅原茉椰さんに挑戦してもらったり。そうやって、若手たちが弱気を捨てて一歩踏み出す「勇気」みたいなものが、あの時点では必要な気がしたんです。まぁ、これも勘です笑。
で、第二弾もなんとか次に繋げられるような成績をクリアできたので(これ、社内事情なのであまり明かせないのですがなかなかシビアなんですよ……)、結構ギリギリの決定だったのですが、この5月10日に第三弾の発売にいたりました。はい、ようやく本題です!笑 このVOL.03発売タイミングでのSKE48の状況、1年前とは大きく変わりました。4年半ぶりのアルバムも発売され、待望だった地上波冠番組も放送が始まりました。8期研究生の新公演もスタートし、各正規チームの公演と併せて劇場は充実。名古屋をはじめ、個々のメンバーの地元仕事なども増えています。それは、ここ2年ぐらい続いていた苦しい状況で、SKE48から離れずに、SKE48を諦めずにいた人たちが蒔いてきた種が、ようやく芽を出してきたということなんでしょう。はっきり言って、2017年のSKE48は充実しています。それは裏を返せば、この『100%SKE48』という本の持つ意味も、変わってきたということです。1年前は、明確な危機感を持って作りました。でも、今はそうじゃない。だって、今回のテーマに「POWER OF LOVE」としたように、メンバーもそうだし、スタッフもそう、もちろんファンも。SKE48に携わるあらゆる人たちの「愛の力」によって、SKE48は長く続いたループから一歩抜け出し、あらたに生まれ変わろうとしています。では、『100%SKE48』は今何をするべきか。考えに考えた結果、現時点での変化の全容と今後への伏線を、しっかりと記録、とくに活字で残しておくべきではないか、という結論に辿り着きました。
かつて、ブブカでは定期的な湯浅洋支配人のインタビュー以外、オフィシャルなSKE48メンバーの取材は行っていませんでした。それでも、毎月名古屋に通って公演を観て、名古屋飯を食べて、地元のスーパー銭湯に行ったり、ラーメン屋(主に好来系)めぐりをしたり、SKE48とは無関係のようなこともしながら、SKE48のことをひたすら考えて何ページも記事にしていました。もう、名古屋への移住を真剣に考えたことも一度や二度じゃありません笑。本当に、自分たちの心で感じるがまま一切の配慮なく好き勝手に書いていました。言うなればそれは、唯一無二の「活字SKE」でした。もう、誰に言われるわけでもなく、「俺達が伝えなきゃいけない」という、よくわからない使命感みたいなものに燃えていたんですよね。しかし、それによって「ブブカはSKE48の機関紙」とか「あそこは頭おかしい」と言われるようになったわけですから、今思うとその熱量はハンパじゃなかったと思います。公式本なのにSKE48メンバーを一切取材していない『SKE48裏ヒストリー』とか、なんなんだろうって思います笑。でも、一番SKE48が盛り上がっていた時代、本当に天下を獲るんじゃないか、いやむしろ完全に時代が変わるぞこれはという瞬間に、一人のSKE48ファンとして立ち会い、その空気を活字として残す作業を続けたことは、もしかしたら燃え上がったSKE48の炎に、ほんの少しでも燃料を加える役目を担えたんじゃないかと思います。
そして、いつの間にやらSKE48を直接取材し、こんな本を3冊も作らせていただけるようになっていました。じゃあもう、自分がやるべきことはここからまた這い上がっていく新生SKE48で、「活字SKE」をするしかないだろうと。当時、SKE48を実際に観たことがない人たちにも「SKE48ってすごいんだね」とよく言われました。そう言ってくれた人たちに、「今のSKE48もなかなかヤバいな」と思ってもらいたい。新たな「SKE48幻想」を作っていく、作っていかなきゃいけないと感じています。はい、僕が勝手に感じているだけです笑。今も昔もそうですが、メンバーの写真と発言が100%の真実だとは思っていません。50%~60%ぐらいですかね。感じ方は人それぞれですし、目に見える情報の足りない部分を、蓄積された経験値と想像力で補い、一人ひとりのなかで「(100%に近い)SKE48」ができあがっていくのだと思います。だから、今回の『100%SKE48』ではメンバーの登場しない活字ページが自然と増えました。これまで実態が一切つかめなかった「エイベックスさん」にもコンタクトをこころみました。劇場スタッフにも取材を申し込みました。それでも、全てを伝えきれているとは思っていません。なんなら、もうちょっとこっちの想像で飛ばして書いた方がよかったなというところもいくつかあります笑。でも、それはグループとしての「強度」があればこそ可能なんです。今、僕はかつての何を言っても書いてもびくともしなかった、あらゆる言葉を受け入れ「語られる」グループであった頃に近い雰囲気を、2017年のSKE48に感じています。
かつてSKE48に惹かれた人たちへ。
今も変わらずSKE48を好きな人たちへ。
今のSKE48を愛している人たちへ。
これからSKE48に興味を持ってくれるかもしれない人たちへ。
SKE48は今、確実に面白くなっています。カワイイのもカッコイイのもいいですが、SKE48が一番ドープです。新規は入りづらいです。ファンも面倒くさい人が多そうです。泣いたり笑ったり怒ったり叫んだり、ややこしいです。でも、面白いです。
『100%SKE48』VOL.03は、そんなSKE48が少しだけわかる本だと思います。
末永く、愛していただけると嬉しいです。
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青木詩織
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